所定疾患施設療養費とは、特定の疾患を持つ入所者に対して、適切な治療や管理を行う施設が算定できる加算です。2024年度介護報酬改定では、高齢者施設の医療対応強化のため、算定対象となる疾患が追加されました。
所定疾患施設療養費とは?
所定疾患施設療養費とは、特定の疾患や症状がある入所者に対して、施設が日常的に実施している管理や治療などの取り組みを評価する加算です。
特定の疾患を持つ入所者へ適切な治療管理を行うことで、入所者の病気の進行を防ぎ、健康維持をサポートできます。介護現場の医療ニーズが高まっている昨今において、重要な加算の一つです。
所定疾患施設療養費の対象者
所定疾患施設療養費の対象者は、以下の5つです。
- 肺炎
- 尿路感染症
- 帯状疱疹
- 蜂窩織炎
- 慢性心不全(2024年追加)
高齢者施設等における医療ニーズへの対応強化のために、2024年介護報酬改定で慢性心不全が増悪した場合が条件に追加されました。また、肺炎と尿路感染症に関しては、検査を実施した方しか算定できません。
所定疾患施設療養費の単位数と算定要件、算定時の注意点
所定疾患施設療養費を算定するためには、算定対象となる5つの疾患に対して適切な治療・管理を実施する必要があります。
所定疾患施設療養費(Ⅰ)の算定要件と単位数
所定疾患施設療養費(Ⅰ)を算定するには、診断日や治療内容を診療録に詳細に記載し、翌年度以降に前年度の治療実施状況を公表する必要があります。
所定疾患施設療養費(Ⅰ)の算定要件と単位数 | |
算定要件 | 診断・診断を行った日、実施した投薬、検査、注射、処置等の内容等を診療録に記載していること 所定疾患施設療養費の算定開始年度の翌年度以降において、当該施設の前年度における当該入所者に対する投薬、検査、注射、処置等の実施状況を公表していること |
単位数 | 239単位/日 |
所定疾患施設療養費(Ⅱ)の算定要件と単位数
所定疾患施設療養費(Ⅱ)を算定するためには、実施した処置などの内容を診療録に記載する必要があります。また、翌年度以降に前年度の治療実施状況を公表し、医師が感染症対策の研修を受講する必要があるため注意しましょう。
所定疾患施設療養費(Ⅱ)の算定要件と単位数 | |
算定要件 | 診断及び診断に至った根拠、診断を行った日、実施した投薬、検査、注射、処置等の内容等を診療録に記載していること 所定疾患施設療養費の算定開始年度の翌年度以降において、当該施設の前年度における当該入所者に対する投薬、検査、注射、処置等の実施状況を公表していること当該介護保健施設サービスを行う介護老人保健施設の医師が感染症対策に関する研修を受講していること |
単位数 | 480単位/日 |
所定疾患施設療養費を算定する際の注意点
所定疾患施設療養費を算定する際は、以下のような点に注意する必要があります。
- 所定疾患施設療養費(Ⅰ)と(Ⅱ)は、同時に算定できない
- 同じ入所者に対しては、1ヵ月に1回のみ所定疾患施設療養費を算定できる
(算定できる期間の限度は、(Ⅰ)の場合は連続する7日間、(Ⅱ)の場合は連続する10日間) - 緊急時施設療養費を算定した日は、所定疾患施設療養費を算定できない
所定疾患施設療養費は、介護老人保健施設を利用する入所者の中で、特定の疾患を持つ方に対して算定できる加算です。
所定疾患施設療養費を算定する際には、実施した検査や治療内容などを記録し、診療録に細かく記載する必要があります。また、所定疾患施設療養費(Ⅱ)を算定する際には、医師が感染症対策の講義を受講している必要もあるため注意しましょう。
2024年の介護報酬改定によって、慢性心不全が算定対象となる疾患に追加されました。今後、介護現場での医療ニーズが拡大していく中で、所定疾患施設療養費は重要な加算の一つです。